電子書籍のスキャン代行・自炊屋を使ってみる(2)~スキャン代行ビジネスが抱える課題とは?

自炊代行 法律

こちらの記事は、以下の続きで後半となります。
 icon-arrow-circle-right 電子書籍のスキャン代行・自炊屋を使ってみる(1)~読書スタイルがこれだけ変わる!


本を裁断機でカットし、スキャナーで取り込んでスマホやタブレットなどで読めるように電子化する(主にPDF化)することを俗に「自炊」と呼んでいます。

この自炊がビジネス化され代行業者が増えるようになって、少なくとも二つの観点で論議や係争が続いています。

ひとつは、電子化されたデータですが・・・当然ながら簡単にコピーができるため著作権との絡みで問題視されるようになりました。

もうひとつは、裁断機にかけられた後の本の始末です。
この裁断済みの本をヤフオクなんかで取引がさかんに行われるようになりました。
さらにこの状況にフリーライダー(ただ乗り)も現れてよけいに事態は複雑化する傾向にあります。

それぞれをもう少し細かくみてきましょう。


スキャン代行はぶっちゃけ法的にどうなの?


スキャン代行、自炊代行の前に、『自炊』そのものはもともと自分の本(紙の本)を自分自身で利用するために電子化するという行為を示していて、これそのものは現行は著作権法の問題はないとされていますね。

問題視されているのは、この自炊を代行するといった商売にした場合です。
個人が自分のために行う自炊は、設備も時間もかかり面倒なので代行業者が自然と増えてきました。

自炊代行において指摘されているのは、業務として本を電子化し依頼者へ電子データを譲渡する行為が「複製権」を侵害する可能性があるということです。

複製権というのは、著作権者の許可なく行ってはいけないことです(コピー・録音・録画など、著作物の再製)

この係争の発端は、2011年9月に日本の大手出版社7社(角川書店、講談社、光文社、集英社、小学館、新潮社、文藝春秋)と作家122人が100社の自炊代行業者へ質問状を送りつけたことから始まりました。

その年の暮れ(2011年12月)には、自炊代行業者からの回答をもとにして7人の作家(東野圭吾、浅田次郎、大沢在昌、林真理子、永井豪、弘兼憲史、武論尊)がスキャン代行業者2社を相手取って東京地裁に提訴しました。

その業者は廃業してしまったため、一旦取り下げられましたが2012年11月に今度は7社を相手取って提訴されました。

この結果、2013年9月30日「自炊」代行は違法であるとの判決が下ったわけです。

私は、だから違法だとここで主張するつもりはありません。
なんせ、個人的には利用価値のあるサービスであることに違いありませんし。
すごく便利なので自分的にはスキャン代行はビジネスとしてずっと残っていて欲しいという反面、大声で『いいよー!これ』と言えない事情がここらへんにあるわけです。

また身近なケースでこういったのはどうでしょう?
本屋さんで買ってきた本を、自分で自炊して友達に渡すとこれはどうなの?・・・というとごくごく身近で小人数のために自炊するケースならなんとかいけそうですけど、それ以外はヤバいとなりそうです。

私的な複製を作成する作業自体、あくまで自分自身で行うのが原則なのですね。

これからスキャン代行サービスのビジネス化を検討されている方は、次に述べる裁断した本の始末にも絡んでいろいろなことを研究したうえで、自己責任で判断されるようお勧めしたいと思います。



裁断済みの書籍のヤフオク取引


本をスキャンする前には裁断機にかけます。
その裁断された本の行方の話です。

ヤフオクでは「裁断済」というタグが付けられた書籍が出品されるようになりました。
いわゆる一般の本屋さんにとっても、古書店にとっても裁断済みはあきらかに無価値なものです。

しかし、自炊という文化が浸透してきている昨今では、裁断済みというのは逆に言うと『スキャン用です』と表明しているのと同じでして、人によっては普通の本になっているよりも価値があると見ることもありえます。


それで、裁断済みの本の販売って法的にどうなの?
これですね、今の法律では問題にならないようです。

というのは、古書の販売と同じで正規に購入したものを再譲渡するのと同じ考え方だからです。その点は自由なんですね。

ただややこしいのは、スキャンされた後の転売というのがほぼ丸見えです。
だから大量販売するとどうなのかというとこれグレーゾーンかな、とも法務関係を10数年企業で関わってきた私の個人的な考えですけど。。。

本でなくCDなんかでもこの考え方は同じです。
つまり、買ってきたCDを販売目的でCDRにコピーして販売したら違法になります。
しかし、iTunesとかMedia Goなどのソフトで一旦取り込んでおいて、もともとのCD自体を販売するのは問題ありません。


さて、ここに自炊という概念が入ると事情はややこしくなります。

自炊したデータをUSBメモリなんかに入れて販売すると違法になります。
さっきお話したCDRの販売と同じことになります。

自分自身のための私的複製かどうかという点がここで重要視されます。
個人利用が目的なのか、それとも最初から譲渡(販売)目的なのかで私的複製かどうかが分かれ道です。

さらに自炊した電子データをヤフオクで販売しようとすると、実は複製権以外にさらにほかの問題も問われます。


ネットオークションにかけるという行為が「譲渡権の侵害」にあたります。
さらにそれ以前にネット上にアップロードすること自体が、「公衆送信権の侵害」にあたってコトをややこしくしていきます。


スキャン代行の後はフリーライダー


法的にどうかはいろいろ論議があるようですが、裁断済みの本の行方を辿っていくとそこに『自炊カフェ』があったりするのが今の世の中です。

ネットカフェの特殊な形態かもしれませんが、自炊カフェはかなり槍玉にあげられています。

スキャン代行よりもはるかにグレーな部分があって論議がも多いということもあるのでしょうけど、フリーライディング的な手法に指摘があるようです。

作家、出版社と自炊業者というのは最初から対立軸が明確な、ある意味当事者間の問題でもありました。

ところが自炊カフェはフリーライダー(ただ乗り)じゃねえの!という意識がそこに出てきたわけです。自炊業者自体がフリーライダーとも言えないこともありませんが、それよりもっとタチが悪いと見なされているようです。


こういったように、苦労して生み出した作品がネットとテクノロジーの進化によって、最初に想定され長くモデルとして利用されてきた形態からどんどん変容を強いられ、それによって衝突が発生しているのですね。

この衝突が次にどんな事態を生み、どう私たちの生活へインパクトをもたらすのかこれからも追っかけてみたいテーマです。

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