2009年頃からでしょうか、ネット広告が価格破壊に翻弄され、今やどん詰まり状態だと言われているのをご存じでしょうか。
Quartzというメディアは、現時点でまだ1年半そこそこの運営ですが、この閉塞感を打ち破りネット広告の新たな価値を再生しつつあり、ニューヨークタイムズなんかもマネを始めた
・・・ということで大いに注目を集めています。
この記事では、そのQuartzの魅力に迫ってみたいと思います。
その前に、どん詰まりにある現在の状況が何によってもたらされたのかも考えてみましょう。
なぜウザイ広告だらけに見えるのか?
広告が基本的にウザイという理由ではなく、そう感じさせてきた背景を探ってみましょう。
この原点が「過剰なページビュー重視」にあると、Quartzの共同経営者で編集発行人のジェイ・ローフ氏が語っています。
どん詰まり広告のわけ・・・ローフ氏の主張のポイント
ページビューを可能な限り増やすことでそれをマネタイズしていくことはこれまで当たり前のこととして考えられ、WEBサイトの四隅にいかに広告を配置するかといううっとおしい試みがずっと続けられてきた。
で、問題はそこにあるのであるのではなく、こういったページビューエコシステムを維持するために、読者や社会、さらには広告主への価値を無視した無神経な処理が行われてきたということにある。
次にデジタル広告に話題は移り、これには業界の大いなる期待が込められていて
「広告は本当に効果があるのか?」
といった長年の疑念に答を与えるものだと考えられていた。
ところが、デジタル広告というものは結果的には、コンテンツ発信者になることのハードルを下げたことだけ。
この「コンテンツ発信のハードルの低さ」+「観客を増やすための検索エンジン最適化」
という二つの組み合わせは、あっという間に広告を出す場所を供給過剰にして、二流のコンテンツを激増させてしまう結果となった。
つまらない二流コンテンツが増えたせいで、広告単価は毎年下がり続け、文化のコモディティ化がありきたりな広告を増やし、そしてさらにそれが広告単価を下げ・・・という悪循環へと落ち込んだ。
というものが、ローフ氏の主張です。
Quartzの斬新な試み
Quartzというメディアは、実に過激にモバイルに特化していることも特徴に挙げられますが、じっくり見ると非常に面白い構成になっています。
以下、PC上で見たイメージで説明します。
左側に最新記事やトピック的記事の紹介があり、右手ど真ん中に記事本体があるシンプルな構成です。
最近、若干上部のメニュー部分に手が加わっていますがここで重要なのが後で説明する『オブセッション』です。
トップ画面からど真ん中にある記事を参照してスクロールしていくとどんどん次の記事が自動で表示されますが、これ自体はさほど新しい手法でもありません。
ま、いずれにしても構成はシンプルながら、もうひとつ。。。
ここが際立って従来メディアと違っているところでして、どでかい高品質な写真画像などを中心にしたネイティブな広告が記事の合間に何気に出てくるわけです。
ここですね、ポイントは。
user experimence(ユーザエクスペリメンス:ユーザ体験)
を広告を通じて表現しようと試みているわけです。
ネイティブ広告というのは、ボーイングとかシェブロンとかゴールドマンサックスとかそうそうたる企業が出しているもので
広告を通じてユーザ体験につなげ、広告自体の独自の価値を生み出しているといって過言ではありません。
オブセッション(OBSESSIONS)という概念
PCで見た場合、左上のにある"FEATURES"をクリックするとOBSESSIONSという言葉が出てきます。
ここがまたユニークなんですね。
オブセッションとは、カテゴリーとも違います。
ジャンルに分けて、そのジャンルごとの話をしているのではなく注目すべき事象について、情報を集め語っていくやり方です。
例えば、
ukraine-crisis(ウクライナ危機)
space business(宇宙ビジネス)
・・・
こういった文脈に沿って関連記事がアップされていきます。
今まで普通に”カテゴリー”という考え方から抜け出せなかった私にも大きなインスピレーションをもらった感じです。
Quartzへの支持
アトランティックメディアが運営しているQuartz。
最初から高い目標を掲げて、現実にクリアしてきていることにも驚きです。
クォーツは2014年では、すでに前年比600パーセント増の売上を記録しています。
それまでにも、
・広告収益は2013年第1四半期と2014年第1四半期のあいだで、426% UP
・同じ時期に、展開した広告キャンペーンの数は320% UP
・広告主の満足度として、今後もQuartzで広告を展開したいと
回答した広告主は80パーセント以上
月間ユニークユーザー数が500万近く、40%は米国外からで、米国、イギリス、カナダ、オーストラリア、インドの順だということです。
驚くべきは、ユーザーの60%が企業役員層であり、イギリスではなんと90%がこの層になるとかで、非常にユーザーの知的レベルが高いことがわかります。
クォーツがターゲットにしている層は富裕層でもなく会社役員という括り方でもなく
インフルエンサーであるということ、
そしてここがまたバズを起こす大きな要因のひとつです。
ここまで読者ターゲットを明確にして、しかもインフルエンサー狙いであるという着眼点がまた何とも言えず考え抜いた戦略を伺える点でもあります。
Quartzが拓いた「解説ジャーナリズム」という切り口とfacebook/twitterという既存メディアが為した切り口と、今後どういった形でバイラルメディアが広がっていくのか非常に興味深いと思います。